四季。姉の戻らない秋
姉が連れてきたのは死だけではなかった。
姉の身体と一緒に持ち帰ったのは、沈黙と歪み。
こらえきれない涙。
絶望と虚無感。
後悔と呵責。
深くかとない悲しみ。
答えのない疑問。
心を折りながら、それでもわたしたちは姉を送り出した。
通夜には本当にたくさんの人が訪れた。
たくさんの人が涙を流していた。
姉の遺影を見て。
もしくは、姉との思い出を浮かべ。
あるいは、わたしたち遺族の涙を前に。
平良さんには父と母の強い希望で葬儀の間、遺族側の席に着いてもらっていた。
彼は終始無言で、無表情を貫き、黒い人の波を眺めていた。
長いようで短い通夜を一通り終えた後、母が平良さんを家に招いた。
夜にはまた葬儀場に戻るのに、今どうしてもと言う母の強い言葉に平良さんは頷いた。
そこでわたしには知らされていなかった、姉が平良さんに宛てた手紙を母は彼に渡した。
彼は静かにそれを受け取り、姉の部屋に残って読んでいいかと細く口を動かして尋ねた。
拒む者は誰もいなかった。