四季。姉の戻らない秋
一度リビングに戻ったわたしは部屋に戻ると言って彼の気配を追うように2階へ上がり、閉じられた姉の部屋のドアの前に立った。
目を閉じ息を潜め、冷えた扉に寄り添った。
しばらく続いた沈黙のあと、平良さんの上擦った声の、愛の囁きを聞いた。
誰か責める相手がいたら、まだ良かった。
縋り付く怒りがあれば、きっと立っていられた。
遺された痛みに敵意を持てれば、この涙は拭えた。
でも、なにもなかった。
なにもかも。
娘を、姉を、恋人を亡くしたわたし達には、はねつけられるものなど、なにも。
ただ自分自身を責める以外には。
姉の部屋の前で泣き崩れ、わたしの嘘を見破り迎えに来た母が肩を叩くまで、わたしはそこから動けないでいた。
夜が更けても降りてこない彼を心配した父が様子を見に行き、泣き疲れて寝ているから毛布をかけてきたと言う言葉に、わたしと母はまた少し泣いた。