四季。姉の戻らない秋
平良さんが姉の部屋から出て来たのは次の日の朝で、彼はそれはもう気まずそうにリビングのドアを開けた。
親戚と交代で戻ってきた両親と4人で朝食を摂り、黙々とサンドイッチを口に運ぶ彼に、母が告別式から火葬の流れを知らせていた。
彼は微かに瞳を揺らし、頷いた。
姉の棺桶には写真と、好きだった干し梅を入れた。
彼は最後に姉に近付き、そっと手を伸ばし髪に触れ、瞼、頬、唇へと指先を移していった。
慈しむような動作に、その場にいた誰もが涙をこらえ、言葉なく部屋を出た。
最期だけは2人きりにしてあげたい。
そう思わずにはいられなかったから。
ひたすら無言で俯き、震えに耐えた。
―――そして白くなった姉を箸で拾って壷に納めた。
彼もいなくなった家に沈黙が転がる。
それはどこにでも現れ、失った存在のぶんだけ部屋中を満たし、時折弾けてみてはわたし達の頬を涙で濡らした。
日ごと激しさを増す悪夢に、何度も姉の名前を呼んだ。
あたたかった家族は季節に従い急速に凍え、春を迎えてもそれは変わらなかった。