男子高校生と男子高校生もどき
「……どうしたんだよ」
戸惑いがちに掛けられた声に、男子生徒はどこか呆然としたように返事をする。
「いや……俺……キレてたん、だよな……。何であんなに……ムカついてた、んだ……?」
「ハア?」
それはこっちの台詞だと、誰もが思っていた。
登校したばかりの女子生徒は何のやり取りか判らず、答えを教えてくれる者を探すかのように周りを見渡す。だが、今の注目の的は呆けた顔をする男子生徒。彼女の疑問に答える者は、今はいない。
「えっと……悪かった。いや、マジで何であんなにキレてたのか、ホント判んねぇんだけど……」
気まずさを醸し出しながらも男子生徒はゆっくり席に着く。それからチラチラと周りに視線を向けたが、やがて視線を机の上に落とし、宿題に取り組み始めた。
クラスメイト達はそんな彼の様子を見て、それぞれ顔を見合わせていたが、程なくしてそれぞれの会話に戻り始めた。
「いや、だから……何なの?」
未だ出入口で立ち止まっている女子生徒には、後に解答が与えられることになる。