男子高校生と男子高校生もどき
《瑚堂学園 二年六組》


それは、授業中に起きた出来事だった。


科目は現代文、初老の男性教師の授業は話が脱線し、進まないことに定評があった。その語りもゆったりとしたもので、睡眠学習に入る生徒が多かった。


「井畑(いはた)、ほら寝るな。起きろ」


井畑と呼ばれた男子生徒は教師の目が届きやすい、教室の前方に座っていた。にも関わらず、授業中の居眠りの回数はかなり多く、この現代文の授業では十分に一回は寝ることもあった。


今回もそんな日常となるはずだったのだが――。


「はあ?てか、大体そんな授業進まねぇだろ、起きてたって意味ねぇだろ」


居眠りを注意されたことへの逆ギレ、と一言で片付けてしまうには、異様な出来事だった。


普段ならば居眠りを注意された後はめをさまし、友人から「ちゃんとしろって」等とからかわれ、それで終わるだけだった。続けて居眠りをすれば教師が怒って立たせたりもするが、その場合は文句を言わず、黙って従っている。


しかし今日は違った。
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