眠り姫24時
私は、図書館の片隅で動けなくなってしまった。



助けて。




本当に、死んでしまう…







そのときだった。
薄れゆく意識の中で、
私は、微かに
とても甘くて優しい声が、
私の体を揺らしているのを感じた。



王子様だ…



「ちょっと、君、どうしたんですか?」


私、もう唇も動かせない。

「誰か!救急車を、呼んでください!」




「まずいな、息、してない…」


その人は、手際良く
私の顎に指を当て、くいと上に向けた。

気道を確保。


心臓マッサージ。


そして、
人工呼吸!


その人は、全く躊躇わなかった。



ああ。


どなたか存じませんが、
ありがとうございます!



私の体は仮死状態にあったが
感覚はあった。


触れた瞬間の唇は、少しカサカサしている。
でも、柔らかかった。

彼は、その柔らかな唇をきゅっと固めると、ゆっくりと息を吹いた。

彼の生温かい呼気が、
私の中に入ってくる。


少しずつ、混濁した意識が鮮明になり、眼球が動く。


トク…

トク、トク、トク。

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