初めましてなんかじゃない
すぐに私から離れた桜は用事と言って帰って行った

「ゴメンな?手、本当に大丈夫か??」

心配そうに私の手首を触れる

思いのほか、顔が近く感じる

ほんの少しだが、自分の顔が赤くなるような気がした

「もう、痛くないよ」

でもね?

さっき爪を立てられたときに、事故の傷口を押されちゃって今もすごく痛いんだ

なんて、こんなこと言える訳ないよ

だって、真人の幼馴染を悪く言うようなこと

それに真人は私と桜が仲良しだって思ってるんでしょ?

それなら、私はそれを壊したくない

私はそう思った

「葵、記憶は、どーなんだ?戻ってきてるか?」

ううん、と首を横に振った

戻るどころか、桜の事で頭がいっぱいだよ

「そっか、今日も前のお前の事を少し話そうか」

私はこくり、と頷くと真人は少しずつ話しはじめた
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