世界一幸せな国Ⅰ
どれぐらい経ったのだろう。
まだ、手術中の文字は明るいままだ。
このまま、2人の笑顔を見られなくなったらどうしよう。
謝ることも、お礼を言うこともできなくなったらどうしよう。
おはようという言葉を交わせなくなったらどうしよう。
どんどん不安が押し寄せてくる。
俺たちは、軽い検査だけで済んだのに。
2人はまだ苦しい思いをしなければならない。
その原因を作ってしまった俺にできることはあるのか。
そもそも、俺に、2人に合わせる顔はあるのか。
無言のまま過ぎていく時間。
重い空気。
よくないことしか考えられなくなっていく。
ア「心配するな。2人の怪我はお前たちのせいではない。自分を過信し自分を守ろうとしなかった2人と、気づくのに遅れた私たち親のせいだ。ただし、後悔することが1つでもあるというのなら、二度とそうならないようにしろ」
俺たちの顔をひとりひとり丁寧に見ながら、お父様は話した。
瞳は、しっかりしてそうでも、不安と後悔を感じ取ることができた。
みんな、何かしら後悔はある。
当然なんだ。
俺とお父様以外は、みんな、ずっと泣いている。
不安なのも、後悔しているのも、俺だけではなかった。