世界一幸せな国Ⅰ
綺麗。
そんな言葉では言い表せないほどの美しさ。
丘から一望できるのは、太陽に照らされて赤く輝く家々や海。
暖かい風がいいぐらいに吹いている。
丘に生えた木の葉は、時には輝き、時には黒く染まり。
もう、半分沈んでいる太陽によって、ここから見える全てが金色に輝いていた。
これは、ただの景色などではない。
芸術作品だ。
私達は木の幹にもたれ掛かって、その作品をずっと眺めていた。
もうそこには太陽はなく、青白く光る月光が、海を伝って太い一本の道を作っていた。
ユ「僕ね、夢の中でここを見つけたんだ。綺麗だったからどこだろうって辿っていたら……」
まさか実在していたなんて、と照れながら笑うユアンはその月光に照らされて、綺麗だった。
ユ「でも、その夢なんかより、本物の方がもっと綺麗だ。一緒に来られてよかった」
そう言うユアンは、彼方に重なって見えた。
「……彼方」