世界一幸せな国Ⅰ
ユ「ローナ、分かってる?今日は自己紹介だけだよ。絶対に手は出さないで」
「大丈夫。分かってるよ」
スゥッと息を吸い、私は大声を出した。
「すみませぇえん!!!!誰か!いませんかぁぁ!!!!」
周りから物音がした。
出てきたのは図鑑通りの見た目の魔族。
魔「あれ?こんなところにどうして人間……」
「あの……私たち……実は、迷っちゃって……」
震えながら、泣きそうな声を出す。
魔「迷っちゃったのかぁ。今日は夜遅いからすぐ近くにある僕の村に来るといいよ」
魔族の男は優しそうに笑った。
これが演技だというのだから、魔族は相当やり慣れている。
「え……いいんですか?……あ、でも……お母さんに怒られる……」
簡単について行くのは怪しまれやすいと思い、お母さんという言葉を出してみた。
魔「お母さんには僕から明日ちゃんと説明するよ」