世界一幸せな国Ⅰ
その晩、私たち2人は客室に泊めてもらった。
「ちょっとトイレ行ってくる」
ユ「んー了解ー」
「絶対に寝ないでよ?」
私が話しかけると、ユアンは眠たげに目をしぱしぱさせながら返事をした。
ユ「分かった、寝ないように気をつける」
寝たら絶対許さない。
寝たら、頭の中にモスキート音流してやるんだから。
そう思ったが、言わなかった。
寝ないと信じてるよ。
私は、寝室から出るとスッと耳に意識を集中させた。
……こっちか?
トイレの位置を聞くべく廊下を歩いていると、シャーッシャーッというあの嫌な包丁を研ぐ音と声が聞こえた。
ル「なかなかいいと思わないか?」
ウ「そうね、さすが若いだけある。2人とも筋肉質だし、煮付けにでもする?」
(……煮付け?!え、なんか思ってたより大分グロいんだけど?!)
話を聞いただけでゾッとして、変な汗が出るのが分かった。
バレないように、慌てる気持ちを必死で抑えた。
当初、そのまま伝える予定だったその会話だが、あまりにも私に余裕がなかったので、要点だけにした。
ル「あぁ、そうだな。山椒と生姜を明日の早朝に取ってくるよ」
ウ「その間に下準備しておくわ」