世界一幸せな国Ⅰ
第六章
精神年齢21歳
村を出て、しばらく経った。
彼らの事情を知らずに討伐しようとしていた自分の心に、情けなさと恥ずかしさを覚えた私たちは、しばらく会話をすることはなかった。
山を歩くと、行きとは違った夜行性の動物がたくさんいた。
まるで同じ道ではないかのように……。
……。
「ユ……ユアン!!私たち村を出てからどっちに曲がった?!」
ユ「左じゃない?」
「反対方向だよ!山を出るの!!」
私は焦ってどんどん声が大きくなった。
しかし、ユアンに焦りの気配はない。
ユ「あ、ほんとだね。じゃあもう山の麓まで瞬間移動するか」
「……そっか、瞬間移動したらよかったのか。……早めに帰らないと分身鈍るかもね……」
ユ「……保たないかなぁ。庭で遊ぶって言ってたし子守に気をつけたらいけるんじゃない?」
若干帰りたくなさそうに顔をしかめるユアン。
「?したいことでもあるの?」
こういう時、彼は自分の中でのプランが崩れるのを嫌がる。
今回は早く帰ると実行できないのだろう。
ユ「うちの領土の西端部、荒れてるところがあるみたいなんだよ」
「あぁ、準貴族の子供あたりが暴れてるんだっけ」
親の苦労も知らないで……。
彼らはいずれ家業を継ぐ立場じゃないのか。
ユ「……芽、潰しときたいなぁ……って……ダメ?」
「……うぅ……じゃあ久々にやりますか」
ユアンの、五歳の北欧系の可愛い顔で、ダメ?と聞かれて断れるわけがなかった。
どう考えても確信犯なのに……。