世界一幸せな国Ⅰ
「……朝日……」
私が呟くと、ユアンはちらとこちらを向いて、続けた。
ユ「そう、朝日。そこのアエリス海岸の近くに綺麗に見えるところがあるらしくって」
「……アエリス海岸!いいね!」
アエリス海岸は、白い砂浜と波の加減でできるハートの形の貝殻が有名な海岸である。
ガイナ帝国が誇る有数の観光地のひとつであるため、お父様も全力でプッシュしているのだ。
ユ「……うん……でも、魔力持たないから……」
ユアンが寂しそうに言う。
「……そればかりは仕方ないことだし。でもアエリスの日の出、綺麗んだろうなぁ」
ユ「……絶対綺麗だよ!あたりまえじゃん!!だから藍乃と行きたかったの!」
今にも泣きそうな顔をして叫ぶユアン。
その顔を見たわたしは、必死に言葉を探した。
「彼方、まだ行く機会なんてあるじゃん!それに!!……私は、どこかに行かなくても、……お前と居られたら……いや!やっぱなんでもない!!」
私の馬鹿な頭では、言葉なんて思い浮かばなかった。
おまけに、凄いことを口走りそうになった気がする。