世界一幸せな国Ⅰ
一番大切な場所
私は前世で唯一幸せだった時に夢で戻った。
懐かしい。
ここは、わたしにとって一番大切な場所だ。
「聞けええぇぇえ!!」
……雪斗。
雪斗の声が聞こえる。
信頼していた仲間、友達の1人。
私の代の、幹部をしていた。
溜まり場だった倉庫の二階に、あの懐かしい幹部が立っていた。
顔つきが、記憶より凛々しくなっているような気がする。
そこに、私と彼方はいない。
あぁ、これは回想じゃなくて今の魁桜(カイオウ)なのだろうな。
私たちがいなくなった世界の。
「今日をもって、俺達6代目幹部は引退する」
蓮……。
一番弱くて泣き虫だった彼は、幹部をするころには後輩に寄り添う優しい先輩になっていた。
もうみんな引退するような歳なんだ。
……もう、二十歳過ぎたんだね。
同じように歳をとれなかったことを、寂しく思った。
しかし、あの後皆が無事だったことに対する安堵感も感じた。