世界一幸せな国Ⅰ
「なあ……藍乃さ、普段はあんなに綺麗に喧嘩して、無傷で澄ました顔してたのに……最期も綺麗に終われよ……!!なんでこんなに傷まみれになってんだよ……!なんで全身に包帯巻いてんだよ!」
この静かな部屋に、俺の声が大きく響いて……消えた。
返事は返ってはこない。
「ターゲットだったから……?!自分が避けたら他が危ないから……ッ?!ふざけんな!!お前らに置いていかれた俺らの気持ち、考えてみろよ!あんなの、自己満だ!!全っ然周りのことなんて考えられてないっ!!
……ごめんな……ッ!ごめんな……ッ!ごめんな……ごめんな……ごめんな……ッ!……ありがとう……おやすみ……。
来世では、幸せな人生だといいな……」
全身傷まみれでも、包帯を巻いていても、藍乃はとても気持ち良さそうに眠っていた。
普通に起きそうなのに、触ったら冷たいんだ。
藍乃の体温は、感じられなかった。
「……彼方ぁ……!なんであん時俺を庇った?!何が『捕まえてね』だ!!ふざけんな!何が『死ぬ運命』だよ……!その運命、変えようと努力しろよ……!」