世界一幸せな国Ⅰ
とはいえ、単語で話せるようになったと思えばその日のうちに文で話すようになった2人。
普通に考えればあり得ないのだが、家族は、この2人ならそうであっても可笑しくないという訳の分からないことを感じていた。
それにはいくつか理由があるのだが、まず、離乳を嫌がらず、むしろ清々しい笑顔で離乳食を食べていた。
次に、歩けるようになったと思えば、図書館に入り浸っていた。
しかも彼らが読んでいた本は、分厚い地学や魔法学、剣術、魔術などの難しいものばかり。
絵本は手に取っても5分後には片付けようとしていた。
本に関してはまだある。
彼らは絵を見ているだけかと思いきや、家族の目を盗むようにして真剣に読んでいたりする。
そういうとき、家族は彼らに声をかけるのに躊躇ってしまうほどなのだという。
第三に、精神が安定しているのだ。
お腹が空いたから泣く、寂しいから泣くなどはほとんどなかった。
寂しいから泣くという行為は一度もなかった気がする。
赤ちゃんらしい愛らしさはあるが、側に家族がいないときにもそうなのかと言われればよく分からなかった。
まだある。
魔力(マナ)が世界一、二を争えるほどに強い彼らは、まだ幼いために魔力の暴走があるはずだった。
普通、魔力が強い者は、精神が安定するまで感情により魔力を爆発させてしまうのである。
しかし、彼らは全くない。
むしろ、魔力をコントロールできているようにも見えるのだ。
最後にもうひとつ。
2人以外の家族が会話で盛り上がっていたとき、彼らはこちらを向いてほしいとアピールするのではなく、一線引いた位置から優しそうに見ているのである(精神年齢17歳の2人にとって、子供3人は歳下、もはや息子とすら感じてしまうのだ)。
もはやここまでこれば、家族も彼らが普通でないことには薄々気づくものだ。
当の本人たちは、可笑しさには気づいていないのだが。