信心理論
僕はその音を遠くに聞きながら、シンとの会話を思い返した。
自分の記憶が記憶でないような、不思議な感覚に襲われた後、ふわり、と自分の頭が宙に浮いた気がして、気持ちが悪い。

「寝すぎ……か?」

僕は、まだ重い体を起こすと、枕元にある携帯に目をやった。
視線を投げかけた先は、デジタル表記で
―5/10 Fri Am7:37―
となっていた。
僕はそれを凝視した後、もう一度、さっきと同じ気持ち悪さに襲われた。

「金曜……なのか?」

深夜に起きた時は、確かに―Mon―と表示していたはずだけれど……

僕は一瞬宙に視線を流した後、手元へと視線を向けなおした。



―5/10 Fri Am7:39―


大きく頭が揺れた。



……なんなんだ?




PiPiPiPiPi―――


甲高い音が、手元で鳴り響く。
表示は、―アラーム Am7:40―。


ビクリ、と少しばかり仰け反った体を、ため息と共に前傾姿勢へと戻す。

「何だ…アラーム……」

アラームをしっかりかけているということは、深夜のアレは単なる勘違いだったのだろう。

そう、心の中で続けると、僕は鳴り続ける音を片手で止めながら立ち上がった。
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