信心理論
3.
もう一度、彼女の足下に視線を戻す。


こんなにも太陽の光が僕らを照らしているのに、彼女を映す影は、何処にも見当たらない。


「私が、見えるのね…。」


彼女は独り言のように呟くと、立ちすくむように俯いた。


僕は恐怖とも違う何かを感じて、その場を立ち去ろうと駆け出した。


関わっちゃいけない

関わりたくない



「待って!」

彼女の声が響く。
僕の足は、ドアの一歩手前で、ピタリと止まった。

「私の話を、聞いてくれない?」


その声は、確実に、先程よりも力強く聞こえた。


関わっちゃいけない

関わりたくない


振り向くな


振り向いちゃ
いけない



僕は、ドアに手をかけた。

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