サッド ナイト ガール。
ブランドネーム 【処女】
あたしはまだ処女で、その【処女】っていうブランドみたいなモンに、一番の高値をつけてくれる男を探してた。

援交では、ゴハン、カラオケ、ドライブ、キス、少し胸を触らせるだけでも男はみんなお金をくれた。
カワイイカワイイちやほやされて稼げるなんて最高。
そのうちに、処女のあたしは売れるんだって思ったよね。

8月の咽るような熱帯夜。
あたしはラブホテルのベッドの上で、ただ天井で輝くシャンデリアを見つめていた。

出会い系で知り合ったレンちゃん。
あたしの身体に付随したブランドに一番の高値をつけた男。

レンちゃんは、あたしの身体に穴を開けた。

薄っぺらい粘膜とともに心の中のなにかが、ぷつん、と音を立てて千切れたような気がしたよ。

「愛してる」

レンちゃんの唇があたしの耳元でそう動く。

嘘でも構わなかった。
誰もあたしにくれなかった、一番、欲しかった言葉。

レンちゃんの刺青だらけの腕は、胸は、とても優しい温度で、あたしは静かに泣いた。

「お金、貸して貰えないかな?」
「明日携帯止まっちゃうんだ」
「連絡取れなくなっちゃうの、淋しいよ」
「来月には絶対に返すから」
「ダメかな?」

生温く湿ったシーツの上で、レンちゃんが放った言葉。

あたしはお財布から3万円を取り出しレンちゃんに渡した。
その3万円がギャンブルに消えていくことなど知らずに。

あたしは最高金額を貰わずに、大切ななにかと引き換えに処女を売った。

15歳のあたしに、セックスというオプションがついたよ。
1回、5万円。

ピンサロの客を誘い、セックスをする度に、一生懸命貼り付けたメッキみたいなプライドがポロポロと剥がれ落ちていった気がした。
音も立てずに、ただただ静かに。

あたしは、少しずつ、ゆっくりと、壊れていく。

小さな音を立てて千切れてしまったあたしの心は、このだらしなく開いた穴は、なにかが挿入されても埋まるようなモンじゃない。

レンちゃんのお金の要求が止まることはなかった。
あたしはお金を渡す度に、必要とされているんだと感じた。
レンちゃんのためなら、見知らぬ男の前で服を脱ぐことなんてたいしたことじゃない。

あたしは、天使。
男に選ばれて、お金で買われて、一滴残さず精液を出してあげる。

淋しい男を救済する天使なの。
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