誰かが言いました。
まあ、猫とは会いたかったけど。


私が部屋に入ると、まず最初に目に入ったのは一匹の猫。


たぶん、三毛猫だ。


私が近付いてもじっと私を見上げていて、抱き上げても動かなかった。ただ、動物の体温が感じられるだけだ。


「可愛い……」


猫の顔を覗き込むと思わず笑みが零れる。 


「あっ」


猫は私の腕をすり抜けて加賀くんの足元に擦り寄った。


「おー、なんだなんだ」


加賀くんが猫に笑いかけて座り込んで猫を抱きしめた。


加賀くんが顎を撫でるとごろごろと喉を鳴らして甘えている。


「やっぱり……懐いてるね」

「まあな。でも、紗枝もけっこう懐いてるよ。初めてなのに、こいつ逃げなかったし」

「え、逃げるの?」

「うん。同じ匂いがするのかも」


くすっと笑って、近寄った私に猫を手渡した。


同じ匂い?


猫を持ち上げて瞳を覗き込む。


私と君の匂いかな?


それとも、私と加賀くんかな。


ねえ、君はどう思う?


瞳を見て心の中で話しかけてみた。


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