誰かが言いました。
「い、今のは忘れて……」

「なんで?」


気づくと、加賀くんが私との距離を詰めていた。


間には一匹の猫付き。


私の顔を覗き込んでくすっと笑うもんだから、恥ずかしくなって体中が熱くなる。


「いや、だって、あの、その……」


密かな願望ではあったけど。


ずっといたいとは思ってたけど。


いや、だって、まさか本人に言っちゃうなんて。


「結婚かあ……そこまで考えてなかったけど」

「ご、ごめんなさい……」

「なんで謝るの。ね、それ本気?」

「ほ、本気っていうか、本気といえば本気だけど、それはあわよくばというか、傍にいたいというか…………」


あわあわと慌てる私に加賀くんがそっと頬に唇を落とした。


初めて感じた彼の温もりに、私の頭はショート寸前。


「いいね、結婚。考えてみる」


それは本気なのか、気まぐれに言ってみただけなのか。


ニヤリと笑ったその表情からは分からない。


でも、確かなことは、私の気持ちは変わらないから。


ずっと傍にいたいから。


『あなたを大切にします』






END.


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