誰かが言いました。
私達は少しずつ、穏やかに二人の時間を過ごした。


サークルの終わりに少し話したり、加賀くんの猫の画像について毎日メールしたり、たまに一緒にご飯を食べに行ったり。


私達は少しずつ相手のことを知っていった。


『じゃ、週末俺の家来る？』


電話の向こうで加賀くんがぽつりと呟いた。


「え……いいの？」


加賀くんの家の猫はずっと会いたかったし、一度家に行ってみたいとも言っていた。


それが現実になるなんて。


『紗枝の家の一番近い駅で待ってて。迎えに行く』


加賀くんは最近私のことを名前で呼ぶようになった。


加賀くんの低い声で呼ばれると自分の名前が特別なものに感じられてなんだかドキドキする。


「うん……わかった」


見られてないからできるけど、ニヤニヤが止まらない。


加賀くんの家に行けるんだ。猫に会えるんだ。


< 8 / 16 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop