誰かが言いました。
「やったー! 一ヶ月目にして、紗枝が加賀くんの家にー!」
ばんざーい! と両手まで上げたから、私は慌てて茜を止めた。
「茜、ここ図書館」
「えへへ、ごめんねえ」
ニヤニヤと笑う茜の声量は変わらない。
「あたし、ずーっと思ってたんだ。紗枝と加賀くんが付き合ったらすごい癒されるカップルになるなって。見てるあたしを癒してくれてありがとう」
「えと……どういたしまして?」
まあ、友達に嬉しく思われることは悪い気はしない。
「ところで、茜はここで何してたの? 工学部なんて図書館と全く縁がなさそうなのに」
「失礼だなー。まあ、あたしは確かに普段は図書館とは全く縁がない人間だけどさー」
茜が私に持っていた分厚い本を見せた。
「……花言葉?」
「うん。次のプログラムの参考になるかなって。前からちょっと興味があってさ」
「茜が? 工学部と花言葉って関連性ある?」
「それよりも、この花見てよ。なんか紗枝っぽいなって思って見てたんだ」
茜が指差したページを私はまじまじと見つめた。
「……アヤメ?」
写真には細い感じの花が写っていた。
青紫色の前に垂れ下がった花と、細長い緑色の茎。
「……これのどこが私っぽいの?」
「紗枝って、なんかアヤメの色っぽいなって」
「しかもこれ、毒あるじゃん。何々、嘔吐、下痢、胃腸炎だってよ。茜、厭味?」
「ち、違うって。ほら、花言葉見てよっ」
「花言葉って……」
私がかったるしく花言葉の欄を覗き込む。
「……これが私って?」
「何も言わなくてもそうかなって」
「……いやいや」
私なんてこんなんじゃないよ。
「どうだかねえ。でもいいな。いつかアヤメ贈られてみたいな」
「普通はバラでしょ?」
「紗枝は夢がないね。不意打ちで贈られたらあたし感動する」
「夢がなくて結構だよ」
アヤメ、ねえ……。
ばんざーい! と両手まで上げたから、私は慌てて茜を止めた。
「茜、ここ図書館」
「えへへ、ごめんねえ」
ニヤニヤと笑う茜の声量は変わらない。
「あたし、ずーっと思ってたんだ。紗枝と加賀くんが付き合ったらすごい癒されるカップルになるなって。見てるあたしを癒してくれてありがとう」
「えと……どういたしまして?」
まあ、友達に嬉しく思われることは悪い気はしない。
「ところで、茜はここで何してたの? 工学部なんて図書館と全く縁がなさそうなのに」
「失礼だなー。まあ、あたしは確かに普段は図書館とは全く縁がない人間だけどさー」
茜が私に持っていた分厚い本を見せた。
「……花言葉?」
「うん。次のプログラムの参考になるかなって。前からちょっと興味があってさ」
「茜が? 工学部と花言葉って関連性ある?」
「それよりも、この花見てよ。なんか紗枝っぽいなって思って見てたんだ」
茜が指差したページを私はまじまじと見つめた。
「……アヤメ?」
写真には細い感じの花が写っていた。
青紫色の前に垂れ下がった花と、細長い緑色の茎。
「……これのどこが私っぽいの?」
「紗枝って、なんかアヤメの色っぽいなって」
「しかもこれ、毒あるじゃん。何々、嘔吐、下痢、胃腸炎だってよ。茜、厭味?」
「ち、違うって。ほら、花言葉見てよっ」
「花言葉って……」
私がかったるしく花言葉の欄を覗き込む。
「……これが私って?」
「何も言わなくてもそうかなって」
「……いやいや」
私なんてこんなんじゃないよ。
「どうだかねえ。でもいいな。いつかアヤメ贈られてみたいな」
「普通はバラでしょ?」
「紗枝は夢がないね。不意打ちで贈られたらあたし感動する」
「夢がなくて結構だよ」
アヤメ、ねえ……。