君のいない街で
晩酌
そうは言うものの、ここのところ毎晩僕の部屋に来ては酒を飲むのはどうにかならないものかと思う。

酔ってくると寂しい表情で、愚痴をこぼす。
人事にも思えず僕は慰める。

たった一ヶ月で、僕は田中と友人のようになっていた。

そんなある日、田中は僕を会社に誘った。

「なぁ、仕事見つからないんだろ?うちで働かないか。給料は少ないが無職よりはいいだろう?」

正直僕は迷った。田中はいい人だし、悪い話ではないと思う。

だけど、どこか抜けている部分があるのを僕は知っているから。

何せ初対面が不法侵入だ。

悪意とは違う不安を抱きながら働くのは辛いのではないかと思う。

「ありがとう。だけど、まだ自分で頑張りたい。自分の力で働かなければダメなんだと思うんだ。」

本心だった。

誰かに甘えて働いても変われない。
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