君のいない街で
異変
過ぎた日を思い出しては後悔ばかり。

あのとき彼女に会わなければ。

あのとき親を海外に行かさなければ。

もう過去は帰ってこない。
前を見て歩いて行けたらどれほど楽か。

だけどもう…

失い続けたものの中に、きっと忘れてしまったものがある。

それは大切なもので、なくてはならないもの。

それを無くしてしまえば、抜け殻のようになってしまう。

今は少し取り戻せたのかな。
抜け殻ではなくなったと思うんだ。

勘違いでなければいい。
田中が“お前は大丈夫だ”と言ってくれた。

その言葉には何ともいえない安心感があった。

僕は大丈夫。

ただ気になるのは“お前は”という言葉。

この頃田中の様子がおかしいのはわかってる。

その言葉に他意はないと思いたかった。
だけどその日はやってきた。
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