君のいない街で
もう一人の住人
バイトが終わり、部屋に戻ったがやっぱり田中はいなかった。

もう一人の住人の部屋に行く前に田中の部屋に寄ったが人の気配はない。

僕はもともと人見知りをする方だし、できれば行きたくはなかったがそうも言っていられない。

ドアをノックしても誰も出てこない。
それでも諦めずノックを続けると扉がバンっと音をたてた。

多分中から扉を叩いたか蹴ったかしたんだろう。

この時気付いた。この住人は引きこもっている。
少し前の僕のように。
まるで人を嫌っているような態度は寂しさの裏返しなんだ。

本人は認めないだろうけど。

根気強くノックを続ける僕にいらついたのか、扉を開けてくれた。

「誰だお前。消えろ。」
不精髭にだらし無い服装。ちらっと見えたパソコンの青白い光と散らかりきった汚い部屋。
換気もしてないんだろう。悪臭が漂っている。

「あの…」

バタンッ

話しかけようとしたときに扉を閉められてしまった。

この様子じゃ多分今日は出てきてくれないだろう。

また明日にしよう。
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表紙・目次

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