君のいない街で
取り立て
騒がしい。ドンドンと扉を叩く音。

壁の薄いこのアパートなら三軒隣の部屋でも十分に聞こえるだろう。

様子を見ようと扉を開けると、黒いスーツの男たちがいた。

ふと、あの時のことを思い出してしまい見入ったことで、スーツの男と目があってしまった。

やばい…

反射的に恐怖にかられた。
「なぁ兄ちゃん、ここの田中って人知らんか。」

「知らないです。田中という人と関わったことはありませんから。」

ドキドキする鼓動を隠しながら僕はこたえた。

「そうか。もし見かけることがあったら金を返してもらえるように言っといてくれないか。」

「わかりました。」

借金取りか。あんなにガラの悪そうなところからお金を借りなければいけないほど大変だったのか。
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