君のいない街で
甘い夢
田中を待ち続けた。立っていることに疲れ、傍にあった木にもたれ掛かり座った。

もう陽が昇り始めている。
田中は帰ってこない。

しばらくして、僕は夢の中にいた。

これは夢だとすぐにわかった。空気が違うんだ。
幸せな空気に満ちている。それは僕が経験したことのないものだと知っている。

だから余計に目覚めなければいいと思える夢だった。
そこには彼女がいて、笑顔で僕を見ている。

後ろを見ると、さっき写真で見た女性と女の子が田中と手を繋いで歩いている。

皆笑顔だ。これが夢でなければいいのに。
そう思ってもこれは夢。
わかっているんだ。幸せなんて簡単には見つからない。
そもそも幸せを探すこと自体無意味なものなんだと知っている。

目覚めたときの喪失感が怖かった。
さめないでくれ。この夢を現実に変えてくれ。

だけど神様なんていない。

夢の終わりは突然に、確実に迫っていた。

遠くから黒い靄が立ち込めて、破壊していく。

それを見ていることしか出来ずに僕は泣いていた。
夢の終わりは儚く、全てを消しさった。
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