君のいない街で
強制送還
俯いて黙ってしまった田中。

「借金なんてどうにでもなります!もし…もし飯間に何かあったときどうするんですか。飯間は一人しかいないんですよ。田中さんだって一人だ。僕は…僕はもう誰も失いたくない。3人で仲良く暮らしていきたい。だから一緒に帰りましょう。」

僕は涙ながらに訴えたが、田中は何も話してくれない。

「借金返済も手伝いますから。」

「待ってくれ。それはいいんだ。俺の借金で迷惑をかけたくない。」

「だったら、頑張って働きましょう?」

「仕事が…職が俺にはないんだ。この年じゃ雇ってもらえる所も少ないだろう。それでは、利息で借金は膨らむばかりだ。」

「黙れ!うじうじしやがって。どうにかなるっつってんだろ。いいから帰ってこい。アパートで待ってる。」

僕は口をあらくした。
突然だったためか、田中はキョトンとしている。
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