君のいない街で
退院の日
飯間を迎えに病院へと足を運んだ。

回復したのか、ちゃんと目には生気が宿っている。

一安心だ。
だけど浮かない表情。
何かを悩んでいるのだろう。

その時、不意に飯間に話し掛けられた。

「なぁ、少し話がしたいんだ。喫茶店へ行かないか?」

びっくりした。いきなり何を言い出すのかと内心ドキドキした。

そんなことでよかった。

「ああ、行こうか。話ってなんだ?」

「それは、喫茶店で話す。」

しばらく沈黙が続いた。
喫茶店に着くまでの間、二人は微妙な距離をとって歩いていた。

カランカラン

喫茶店の扉をあけると今の僕らには似合わない、明るい音がした。

「いらっしゃいませ。二名様ですか?お煙草はお吸いになりますか?」

かたことの接客に苛立ちを感じながら、返事をした。

「…はい。」

「ではあちらのお席へどうぞ。」

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