君のいない街で
間違い
全ての元凶はこの女性にあるように思ってしまう。

この女性だけが悪いわけではないと思うけれど、田中と飯間に情がある今、僕は苛立ちを隠せなかった。

「もう遅いんだよ。田中は今、独り身になってしまったし、飯間はもういない。もう誰も貴女を必要としていない。頼むから帰ってほしい。そしてもう二度と…」

女性は大声で泣いていた。
この女性も被害者だ。わかっているけど、わかっているけど…。

「すみませんでした…。」

女性は席を立ち、涙を拭きながら喫茶店を出て行った。

女性の“すみませんでした”と言う言葉が頭に残って離れない。

ああ、こんなにまずいコーヒーは初めてだ。

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