君のいない街で
平穏な日々
夜も深まり静まりかえった頃、練習を続けた。

人に聴かせるレベルになるにはまだまだだけど、歌っていることが楽しい。

ギターも少しずつ練習した。

ギターは僕にあっているのかもしれない。すぐに簡単なものは弾けるようになっていった。

何年か月日は流れ、田中は借金を返し終えた。飯間もアパートに帰って来た。

僕もずいぶん歳をとった。 歌声もギターもそれなりにはなったと思う。
駅で歌っていれば、数人は立ち止まってくれる。
頑張ってねと声をかけてもらえる。

それだけで幸せだ。

僕の周りが笑顔になっていく。

僕の望んだものが手に入るような気がした。

そろそろ、詞を書こう。

いつの日か、僕の夢になっていた彼女への歌。

今なら書ける。

根拠なんてないけれど、大丈夫な気がするんだ。
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