君のいない街で
過去
僕の両親は自分たちで会社をたちあげた。

ささいなきっかけで大繁盛したらしい。

だけど海外旅行中、トラブルに巻き込まれこの世を去った。

金銭を狙った犯行だった。

僕は、そのとき祖父の家にいたため助かったが、子供の僕には、理解できず泣くことすらできなかった。


それでも遺された膨大なお金。

それを見たときやっと親は死んだんだと理解した。
あれほど涙を流したことは多分ないだろう。


ただ両親が恋しかった。

もう一度両親に会いたかった。

仕事仕事だった両親と、まともに遊んだ記憶はない。

“この取引がまとまったら遊園地に連れていってあげるからね。”

これが最後の言葉だった。

何の思い出もないまま、僕は両親を失った。

その頃から、幸せそうに暮らしている同級生をみることが辛くて、家に篭り始めた。

高校には行かず、両親の遺した貯金だけで生活していた。


僕に幸せはやってこない。
両親を亡くしたことを理解した日からそう思っていた。
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