君のいない街で
一時の幸せ
懐かしいことを思いだした。

きっと、料理をつくる彼女の姿に母親を重ねたんだ。

それくらいテキパキと料理をしていた。

できたよ。と差し出されたスパゲティー。

久々だ。いつも出前のものを食べていた僕には、涙がでるほどおいしかった。

ありがとうの言葉も言えないほど夢中で食べていた。

「おいしい?」

うんうんとがっつきながら首を縦に振った。

「食べるのに夢中だね。」
笑いながらからかう彼女が、かわいくて抱きしめたくなった。

「それじゃ帰るね。ちゃんとご飯たべるんだよ。」

待って!心で叫んだが声には出来なかった。

涙とスパゲティーが僕の口を塞いだからだ。

ガチャっとドアを開け、彼女は帰っていった。

今日は“また”がなかった。もう来てくれないのだろうか。
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