君のいない街で
優しさ
なんでもないことはないだろう。
「まさか…またあのグループに…」

「違う!違うの…」
じゃぁいったいなんだというんだ。

「実は親に婚約をさせられて…」

え?

「彼氏は?なんていっているの?」

彼女は首を横にふった。
「いないよ。あなたと離れてから一度も。」

だけど…

「だけど手紙で彼氏が出来たって、幸せだって言っていたじゃないか。」
俯いたまま何も言おうとはしない。

それはきっと彼女の優しさだったんだ。

僕がどんな心境かを察して良かれと思ってついた嘘。

「そうなんだ。ありがとう…ごめんな。」

彼女は幸せになっていない。僕は情けない男だ。
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