君のいない街で
目と目
罵声をあびるサラリーマンの声で目が覚めた。

こんなにもひどい起こし方はない。

不機嫌な顔で外を見ると、彼女がいた。

サラリーマンにぶつかり、書類をぶちまけてしまったようだ。

前日は雨だった。そのせいで書類はぐちゃぐちゃになっている。

サラリーマンは執拗に彼女を責め立てていた。

彼女だけが悪いのか?

サラリーマンにだって否はあるはずだ。

お互い道を歩いていたんだから。

なのになんだ。

何度も謝る彼女が可哀相だ。

助けてあげたい。

だけどそんな勇気がない。

周りの人は皆見てみぬフリ。

汚れたものを避けるような態度が腹立たしい。

僕は自分に置き換えているのかもしれない。

なんで人ってやつはこうなんだ。

助けることが出来るだろう。

言葉はなんのためにあるんだ。

何も出来ないくせに、僕は部屋という名の自分の殻から吠えていた。
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