君のいない街で
これから
あてもなく、ただ静岡へ。 電車を乗り継ぎやってきたものの、空気が違うように感じる。

アパートを借りたけれど、場所がわからない。
もともと地図には弱いほうだから、しかたないのだけれどただ時間だけが流れていく。

日が暮れたころ、ようやく見つけたボロアパート。他に住民がいるのか。それもわからないほど人の気配がない。
しかも、泥棒に入ろうと思えばいくらでも入れそうだ。ここにいる人間から盗れるものなんて何もないだろうが…。

6畳1間でトイレは共同。風呂も銭湯にいかなければならないここで僕は生活をしていく。

親の遺したものも全て置いてきたせいか、たった6畳がひろく感じられた。今日はもう寝て、明日から仕事を探そう。

きっとすぐに見付かる。

働くことくらい誰にだって出来るんだ。

このとき僕はまだ、現実を知らなかったんだ。
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