先生
クリスマスパーティの帰り道。
私は斗真と帰っていた。
帰る途中で何人かのカップルとすれ違った。
あのカップルはクリスマスを一緒に過ごして幸せなんだろうな。
「やっぱり明日、少しでも会えない?」
そんなことを考えていたら斗真が思いがけないことを言った。
私はお兄ちゃんと毎年クリスマスを一緒に過ごしてると嘘をついてしまっていた。
だからクリスマスに誘われたけど断っていた。
「…ごめん。」
ごめんしか言えない。
クリスマスは好きな人と過ごしたい。
そんな夢みたいなことを考えてるなんて斗真には言えない。
だってその好きな人は斗真じゃないから。
それに、好きになってはいけない人だから。
元に戻れないってわかってるから。
だから明日のクリスマスは一人で誰とも会わずに過ごすって決めた。
「ほんと、ごめん。明日はダメなんだ。」
残念そうに切なく斗真が笑う。
「そっか。しょうがないよね。
でもこうして今二人でいるからいいや!芽唯、メリークリスマス!」
私の嘘なんて疑おうともしないで満面の笑みで私にそう言ってくれた。
これ以上、優しくしないで。
優しくされるとつらい。
私、斗真の気持ちにはもう答えられないってはっきりわかってるのに。
ごめんね。斗真。
こんな私を許して。
「メリークリスマス。斗真。」