好きのおもさ
何も言わずに開けたドアを、閉めようと思った.
だけどその行為は失礼だと思うので、ちゃんと発言することにした.
「帰って下さい」
「せっかく来たんだから、もうちょっと歓迎してくれよ」
口を尖らせた宇川くんが言う.
「来なくていい」
「やっとここまで辿り着いたっていうのに、また歩かないといけないわけ?!」
弟が皮肉なことを言う.
「な、コイツもこう言ってることだし.
ちょっとは相手してくれよ」
「何で私がそんなことしないといけないの??
私がしたくないことを、強制するのはやめてほしい。
私、絶対あなたと関わらない!」
さっきから必死にドアを閉めようとしているが、相手の力に適わないためドアが閉まらない.
「おまえ、人と仲良くできないのか?」
弟からの挑戦的な言葉に、腹が立つ.
弟の発言に気を取られていた宇川くんは、手の力が少しだけ抜けていた.
その隙に急いで宇川くんの手をはぎ取り、ドアを閉めた.
そしてドアにもたれかかり、大きなため息をついた.
すると、宇川くんの声がドア越しに聞こえた.