好きのおもさ

私の席は幸い最前列のため、顔を上げなければ誰も見ることはできない。


意外な好都合。



だけど実際は上手く行かなかった。



「加奈ちゃん!おはよう!!


加奈ちゃんが学校に来るの、待ってたんだよ」



いつものハイテンションで、新山さんに話しかけられる。


返事をするため、嫌でもクラスメイトが視界に入る。



…嫌がっちゃいけないんだ。


何しにここに来たんだ、自分。



「おはよ…  ありがと」


小さな声で私は挨拶をした。



いつものようにがやがやしている教室に、私の声は響かなかった。


注目している人がいれば、無視して友達と楽しく駄弁り合う人もいる。



そんな中宇川くんは…。 こちらを見ていた。


一瞬目が合ったのを、私はすぐに逸らした。



何だか彼を見るのが恥ずかしくなったからだ。



目の前にいる新山さんを見てみる。


私の返事に喜んでくれてるみたいだ。




やがて、朝のチャイムは鳴った。



< 375 / 471 >

この作品をシェア

pagetop