好きのおもさ
私の席は幸い最前列のため、顔を上げなければ誰も見ることはできない。
意外な好都合。
だけど実際は上手く行かなかった。
「加奈ちゃん!おはよう!!
加奈ちゃんが学校に来るの、待ってたんだよ」
いつものハイテンションで、新山さんに話しかけられる。
返事をするため、嫌でもクラスメイトが視界に入る。
…嫌がっちゃいけないんだ。
何しにここに来たんだ、自分。
「おはよ… ありがと」
小さな声で私は挨拶をした。
いつものようにがやがやしている教室に、私の声は響かなかった。
注目している人がいれば、無視して友達と楽しく駄弁り合う人もいる。
そんな中宇川くんは…。 こちらを見ていた。
一瞬目が合ったのを、私はすぐに逸らした。
何だか彼を見るのが恥ずかしくなったからだ。
目の前にいる新山さんを見てみる。
私の返事に喜んでくれてるみたいだ。
やがて、朝のチャイムは鳴った。