(短編)君に微熱




バレてたのか、やっぱり。


瞳がドアの前にいたとき、そんな予感はした。
慣れない嘘は、つくもんじゃないな。



「嘘ついて、ごめんね・・・。でも、俺に彼女がいるって言えば、二人は俺に気を使わずにまた、付き合えるでしょ?」



彼女のほうを見るけど、こっちを見てくれない。

やっぱり俺、余計なこと・・・・



「なんで?」


「え?」


「なんで気付かないの?」



彼女は目に涙を溜めている。

もう何年も一緒にいるのに、こんな顔は、初めて見た。



「私、結構分かりやすい方だと思うんだけどな・・・」



彼女の目から大粒の涙が溢れていく。


息苦しい。

彼女にこんな顔をさせている自分に苛立ちを覚える。


今まで、もやもやして、よく分からなかった感情の意味が、なんとなく分かったような気がした。


今、ちゃんと伝えないと。




< 19 / 27 >

この作品をシェア

pagetop