(短編)君に微熱
バレてたのか、やっぱり。
瞳がドアの前にいたとき、そんな予感はした。
慣れない嘘は、つくもんじゃないな。
「嘘ついて、ごめんね・・・。でも、俺に彼女がいるって言えば、二人は俺に気を使わずにまた、付き合えるでしょ?」
彼女のほうを見るけど、こっちを見てくれない。
やっぱり俺、余計なこと・・・・
「なんで?」
「え?」
「なんで気付かないの?」
彼女は目に涙を溜めている。
もう何年も一緒にいるのに、こんな顔は、初めて見た。
「私、結構分かりやすい方だと思うんだけどな・・・」
彼女の目から大粒の涙が溢れていく。
息苦しい。
彼女にこんな顔をさせている自分に苛立ちを覚える。
今まで、もやもやして、よく分からなかった感情の意味が、なんとなく分かったような気がした。
今、ちゃんと伝えないと。