(短編)君に微熱
トンッ
背中に何かがぶつかる。
考えながら歩くという悪い癖のせいで、度々人にぶつかったり、段差で躓いたりすることがある私にとっては、こんなこともよくあることだ。
無意識に歩くスピードが遅くなっていたせいで、後ろを歩く人にぶつかってしまったのだろう。
謝ろうと振り向くと、見慣れた顔があった。
「瞳、おはよ」
嫌味なくらい爽やかに笑う和泉が、私を至近距離から見下ろしている。
体勢的に、彼に後ろから抱き締められるようなかたちになってしまっていたため、慌てて離れた。
そんな私の気も知れず、「どうしたの?顔赤いよ?」なんて、彼は心底不思議そうな顔をする。
「なんでもない」
「あ、そっか、寒いのか、ちょっと待って」
和泉は、口が隠れるほどぐるぐる巻きにしていたマフラーをほどいて、私の首に巻き付けた。
それで、「よし、これでだいじょうぶ」と一回り背の低い私の頭を撫でる。
私からすれば、全然大丈夫じゃない。
それに、こんなことをするから、周りの友達から付き合ってると勘違いされるんだ。