(短編)君に微熱




一瞬、間があいて、そして



「え!?」



涙で真っ赤になった目が、俺の目を見た。


あ、ようやく目、合った。


気持ちを口に出せてすっきりしたのは、ずっと心のどこかでこういう思いを持っていたからに他ならない。



「ふ、やっとこっち見た」


「・・・だ、だって、好きとか、いうから」


「・・・本気だよ?俺」


「分かる、けど・・・和泉は、簡単に触ったり、顔近づけてきたりするから、そういうの、本気にしていいのか、分からなくて」



だめだ、こんな顔で、こんなこと言われたら。



ぎゅ、



「え!?ちょ、和泉、なんで抱き締めて」


「瞳は、俺が誰にでもこんなことすると思うの?」



俺の胸で、小さく息をする彼女が、今はもう、愛しくて仕方ない。


彼女の耳に、唇を寄せて



「好きだから、触れたいと思うんだよ」



そう囁けば、彼女は形の良い、きれいな耳を真っ赤に染める。




ああ、そっか・・・

そういうことか、


ふふ、




じゃあ、



いつから俺たちは、両想いだったんだろ。



< 21 / 27 >

この作品をシェア

pagetop