(短編)君に微熱





「あれ?雅、髪切った?」


「おー」



挨拶もそっちのけで、そんな話を始める二人。


髪・・・?


気になってそっちを見ると、和泉の反対隣を並んで歩く、影が。


あ、ほんとだ。


確かに、目にかかるほど長かった前髪も以前よりすっきりした。

というか、全体的に短くなって、すっかり爽やかになっている。


あまりに印象がガラリと変わったものだから、驚いてしまった。



「ほんとだ!すっきりしてる!誰?」


「なんだよ、その反応。お前が切ったほうがいいって言うから・・・」


「あ、それで切ったんだ!」


「ばか、ちげーよ、調子乗んな」


「あはは、でもやっぱり、雅は短い方が似合うと思ったんだー」



私の一言に、雅はすっかり大人しくなってしまった。


相変わらず、何考えてるかは分からないけど、面白い反応をする。


「格好いいね」と更に褒めると、「からかうなマジで」と和泉越しに怒られた。


私たちに挟まれながら、黙って会話を聞いていた和泉は、



「瞳、他の男にかっこいいとか、俺でもさすがに妬くよ?」



なんて、恥ずかしいことをさらっと言ってくれるのだった。


雅が、いちゃつくなよ、と言っている。


和泉は前より強く、私の手を握り返す。


私はこんな時間が幸せで、笑う。




あれから和泉が、私から目を反らしたことは



一度だって、ない。




私たち三人の関係も、



驚くことに、



以前より良くなっている気がする。




きっと、大好きな二人のお陰だ。






End





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