(短編)君に微熱
誤解されないかヒヤヒヤしながら二人で並んで坂を上っていると、後ろから和泉を呼ぶ声がした。
その声ですぐ、人物が特定される。
「あー雅、おはよー」
「ん、はよー」
もう一人の幼馴染み、雅だ。
彼は湯気を上げる珈琲を片手に、大きな欠伸を溢した。
私もいるのに、私に声をかけない理由に心当たりがあるような、ないような。
「おはよう、雅」
仕方なく私から挨拶してあげると、和泉にするより素っ気なく彼は、あー、とだけ答えた。
でも、まだ、無視されるよりマシか。