Heat haze〜陽炎〜
「りょう…?」


呼ばれて顔を上げた

不思議そうな顔をしたモト兄が立っていた


「あ…。」


驚きで言葉がでない私にモト兄は言う


「待たせた?」


肩から下がるギター

黒髪は肩にさわるくらいまで長くて

ストレートでサラサラ感が触れてないのに解る


黒ぶち眼鏡の奥の瞳が少し困ったように私を見つめる


「ううん。大丈夫。」


笑顔を見せた

せっかくのモト兄との時間
笑って過ごしたい

私の笑顔だけ見てほしい


「そう?…ならいいんだけど。
じゃ、行くよ。」


歩き出したモト兄


あの頃とはちがう
私はモト兄の隣を歩く


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