Heat haze〜陽炎〜
しばらく歩いて
裏路地に入った


輸入雑貨店やおしゃれなショップが並ぶ


「ちょっと寄り道。」


そう言って
モト兄は角にあるアンティークショップに入った


私もあとに続く



「こんちわ。」


「やあ、いらっしゃい。
来ると思っていたよ。」


モト兄の顔を見ると中年の店の主人が立ち上がった


どうやら顔馴染みらしい


私は二人の会話をただ聞くだけ


「コイツの音が見つからなくて。」


背負っていたケースをはずして台に置いた


大事そうに出てきたのは
木目のきれいなアコースティックギター


「ほぅ、モーリスのヴィンテージじゃないか。」


店の主人は目を輝かせてそれを見入った

手に取って
弦を弾く


「いい音じゃないか?」


ギターなんて全くわからない私はその音がただ普通にしか聞こえなかった
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