Heat haze〜陽炎〜
しばらくの沈黙


その後
モト兄が口を開いた


「カッコ悪いな…。
まさか、りょうに慰めてもらうなんて。」


顔は伏せたままモト兄は言う

「関係ないでしょ?
昔はよく私が慰めてもらった…。今はその恩返しだよ。」


サラサラの髪を優しく撫でる


「あの日…りょうに何も言わずに居なくなった事を聞かないのか?」



私が3歳の夏に
居なくなったモト兄


その理由を聞きたくないって言ったら嘘になる


だけど


「今は…聞かない。
話したくなったら話してよ?
今はモト兄の心を温めるのが先決だから。」


そう言って
モト兄を抱き締め直す


「りょう……
ごめん―…。」


モト兄の腕が私の背中に周り、ギュッと力が入った


それが嬉しくて
驚いて

すごく……

悲しかった
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