Heat haze〜陽炎〜
どれくらい経ったのだろう

辺りは日も沈み暗くなり
部屋には影が落ちた


スッ…―


モト兄が私の体を離した


「もう、大丈夫。
だから、りょうも遅くなる前に帰れ。」


そう言ってギターを持ち出したモト兄


曲ができそうなんだ…


私は立ち上がり
モト兄の背中を見つめた


「じや、帰るね。
バイバイ。」


モト兄の返事を待たずに部屋を出た


エレベターに乗った所で私の力がつきたように座り込んでしまった



腕に残るモト兄の感触
背中に熱く灯る熱


一度気付いてしまった気持ちからはもう逃げられない

もう
あの頃には戻れない
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