Heat haze〜陽炎〜
『…着信もメールも拒否してたから…。あの日の俺が原因なら…―謝りたくて。』


あの日


モト兄が私を抱き締めた日
私は
あの瞬間にモト兄への想いに気付けた



「違うの…
違うのぉ…―。」


声に涙が滲む


「モト兄と連絡しなくなったのは……

私が…本当の気持ちに気づいたから。
それでも、彼氏と…一緒にいることにしたから…。」


『そうか…。』


モト兄の声が消えそうなくらい小さくなった


「でも、結局はダメだったんだよ…。そんな中途半端な事じゃ誰も幸せに出来なかった。
自分が一番可愛かったんだ。私は……卑怯者なの。」

泣かないようにしていたのに

涙はもう私の意思を無視する


『そうなんだ…。





でも、ソレに気付けたならりょうは最低じゃない。

大丈夫。
他のヤツが離れて行っても俺がずっとお前の味方でいるから…。』



いつかも言われた言葉


どんなにいじめられても
モト兄は同じことを言って私の傍にずっといてくれた


「モト兄…―

モト兄ぃ……―。」

泣きながら名前を呼ぶ事しかできない


もう、止められない
自分の意思じゃどうしようもない


『りょう、今どこ?』


「あ、アパート。」



『待ってろ
今行くから。』



そう言って電話が切れた
< 85 / 91 >

この作品をシェア

pagetop